カンヌライオンズ 登壇の舞台裏(後編)
こんにちは。みんなの銀行デザイングループリーダーの中村です。みんなの銀行のパートナーであるアクセンチュア ソングのメンバーとともに登壇した「Cannes Lions International Festival of Creativity」(以下カンヌライオンズ)のビハインド・ザ・シーン(舞台裏)をお伝えするnote後編では、前日のリハーサルと本番当日のドタバタ劇をお届けします。
※アクセンチュア ソングは、アクセンチュアのなかでも、クリエイティブやテクノロジーを駆使して社会的インパクトを生み出し、クライアントのビジネス成長を支援する組織です。
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リハーサルへ
Day1の夕方にはスピーカーリハーサルが予定されていたので、再びホテルから会場のスピーカーラウンジへ移動。スピーカーラウンジからステージまでは、ゴルフカートのような乗り物に案内され、それに乗って移動しました。そしてステージ裏口から入り、長い廊下を渡るのですが、この廊下の壁一面には、カンヌ国際映画祭でレッドカーペットを歩いた映画俳優の写真が飾られていました。「多くのセレブがここを歩いたんだな」と感慨にふけりながら長い廊下を通り抜け、階段を登って技術ルームへ。ここで技術士に私たちのスライドデータを渡し、スピーカーノートのサイズの調整やクリッカーの確認を行い、最終的にスライドデータをフィックスさせました。
その後、登壇する本番ステージへと向かったのですが、その時はイベントやセミナー等の全てのセッションが終わり誰もいない状態。ステージ横から入り、どのように歩くかを確認しながらステージへと上がりました。立ち位置や椅子の配置、会場の雰囲気を確認。リハーサルでは明日の本番をイメージしながら、大きい声を出して楽しんでいるように振舞いましたが、本当は緊張と恐怖でいっぱいでした。そして、イベントオペレーション担当と明日の集合時間を再度確認して、前日は終了。
……と思いきや、ここで事件が!
なんと技術士から、つい先ほど渡したばかりのスライドデータを紛失したとの連絡が……技術ルームで最終調整した苦労が全て水の泡に。仕方がないので、佐々木さんが再度データを最終調整し「もう無くさないでね」と念を押してからお渡しし、この日はようやく終了しました。
いざ本番ステージへ
Day2本番当日、私たちはホテルで最後の練習を1回だけ行い会場へ。3人でスピーカーラウンジに入った後は、極度の緊張状態からかお互いが会話することもなく、それぞれ壁に向かって、スクリプトの台詞をブツブツと繰り返していました。リラックスしようとストレッチしたりもしましたが緊張はマックスのまま。でも、ここまでにたくさんの練習を重ねてきたので、あとは自分達を信じるのみでした。
集合時間の5分前に指定の場所へ。ピンマイクをセットし、マイクチェック。その後はとにかくうろうろしながら登壇時間を待ちました。そこでもそれぞれ壁に向かってブツブツ。そして登壇予定の時間を10分過ぎた頃にようやく声がかかりました。ステージへの赤い扉を開けると、そこにはテーブルと椅子がセットされていました。
……が、ここでも事件が!
昨日のリハーサルでお願いした配置と違う……。リハーサルでは、スクリーンは右寄りに配置されていたので、椅子はステージ左寄りに配置するようお願いしていたのですが、椅子はステージど真ん中に配置されていました。そこで急遽舞台袖で、3人の立ち位置をどうするかを話し合い、変更。
そうこうしている内に、司会のアナウンスでステージに呼び入れられ、拍手の中ステージ上へ。私はステージ奥に配置された椅子に座りましたが、思いっきりスクリーンと被るポジションで、恥ずかしさ倍増。眩しいスポットライトを浴びながら、本番がスタートしました。
プレゼンテーションは、柳さんの「Culturize(ブランド戦略)」から始まり、佐々木さんの「Frictionless(サービス・UI)」、そして最後に私の「Everyone(組織文化)」の順で進みました。
柳さんは、プレゼンテーションのつかみでしっかりと笑いを取って、ユーモアを交えながら長いパートをやり遂げました。
佐々木さんは、もともと舞台ダンサーを目指していたこともあり、ステージでの立ち姿が良く、またスクリプトのミスも一切なく堂々たるパフォーマンスで、圧巻の一言でした。
そして私はというと、極度の緊張から口の中の水分が足りない状態に。水を飲むタイミングを誤り、やや言葉に詰まる瞬間もありましたが、なんとか自分のパートを伝え切りました。こうして3人でやり切った海外での初めてのプレゼンテーションは、非常にチャレンジングで、いくつかのドタバタ劇もありましたが、結果として無事に終了することができました。
プレゼンテーションを終えて
本番終了後は、アクセンチュア ソングから同行したメンバーが暖かく迎えてくれました。登壇メンバーは全員、極度の緊張から開放され、徐々に体中から力が抜けていくのを感じていました。中には号泣するメンバーも。私もこれまで様々なステージで登壇する機会がありましたが、この日の緊張は、これまでの人生で経験した中でも最大の緊張となりました。
ステージから降りると、海外からの参加者からたくさんの声をかけていただき、みんなの銀行の今後の展望や、海外展開の可能性などについて質問をもらいました。そこでは有意義な意見交換ができたので、今後もつながって交流していきたいと思いました。
興奮が少し落ち着いたところで、スピーカーラウンジに戻り、ビールで乾杯。この日は少しだけ授賞式を覗きつつ、登壇の打上げディナーで終了。
今回の登壇で得られた学び
あらためて振り返ると、カンヌライオンズに登壇された他のスピーカーと自分のプレゼンテーションを比較した時に、不足している部分を多く見つけました。
その一つは、オーディエンス(観客)とのつながりの作り方です。彼らは、オーディエンスに対話するように訴えかけ、そしてオーディエンスのフィードバックを確認しながら、会場の雰囲気とスピーチを合わせていき、最終的に、会場に一体感を生み出していっており、それが本当に素晴らしいと感じました。生み出した一体感の中で、本題を自然体で伝え、相手の中に響かせていくか。特に英語のプレゼンテーションでは、日常の自然な会話に近しいスピーチで入り、会場の注目を集めて雰囲気を作っていくという、この「対話力」の重要性を痛感しました。
プレゼンテーションの力は、デザイナーの普段の業務の中にも強く求められる部分だと思いますので、この学びは今後に活かしていきたいと思いました。
さいごに
前編・後編にわたって、カンヌライオンズのセミナー登壇の舞台裏をお伝えしました。実際のプレゼンテーションの動画は公開されていませんが、実は内容の主な部分は、noteを始め様々なシーンですでに発表している情報を含みますので、今回はHOWの部分にフォーカスしてお届けしました。
今回の登壇をきっかけに、改めてみんなの銀行のプロジェクトでやってきたことを、柳さん、佐々木さんとじっくりと振り返り、これまで何をしてきて、これから何を共有していけるのかを見つめ直すことができ、とても良かったと思います。3年前、プロジェクトに参画したばかりの頃は、まさかこんな大きなカンヌライオンズというステージに立つことができるとは、想像もしていませんでした。アクセンチュア ソングとみんなの銀行のデザイナーが知恵を絞り合って作り上げた世界観を、少しでも世界にアピールできたかなと思います。
あらためて、この素晴らしい機会を与えてくださったアクセンチュア ソングの皆さん、ありがとうございました!
筆者紹介
中村 隆俊
株式会社みんなの銀行 デザイングループ リーダー。デザインマネージメントおよびディレクションを担当。デジタル領域のプロダクトデザイン(UI/UX)を中心に株式会社エムスリー、株式会社ラクスルを経て、2019年に東京から福岡へ移住。ふくおかフィナンシャルグループ みんなの銀行プロジェクトに参画し現在に至る。HCD-Net認定 人間中心設計専門家。趣味はクラフトビール探索。