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「みんなの銀行」永吉副頭取に質問!デジタルバンクって、そもそも何ですか?(後編)

銀行界に一石どころか、あらゆる方向に石を投げまくる革命児!  国内初のデジタルバンク「みんなの銀行」。今まさに! 開業したてのホヤホヤですが、ここに至るまでには、5年という長い年月と、さまざまな苦労があったようでして。そこのところを、立役者であるみんなの銀行の副頭取、永吉健一さんにインタビュー。最終回にふさわしい、胸アツになるようなエピソード、いろいろ聞いてきました。
文:山村光春 写真:中村紀世志

↓ インタビュー前編・中編はこちら

お金はなくとも、実は「物が買えている」時代へ。

――それにあたって、銀行以外の業種との連携などはお考えですか。

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永吉:これまで金融商品は銀行でしか使えない、買えないとうのが普通でしたが、これからはいろんな事業者さんの後ろ側から銀行の機能や金融商品を提供する。銀行に来なくても、事業者さんのWebサイトや店舗などからシームレスに使えるような仕組み作りをやりたいなと思っています。店先で物を買ったと同時に口座から残高が落ちて決済が終わっているとか、お金はないんだけどその場でローンが借りられて、実は物が買えているみたいな。こんなことが未来の銀行や金融の普通になるのを目指しています。

――既にQRコードなど非接触の決済サービスがあるわけですが、そうしたものとどこが違うのでしょうか。

永吉:そうですね。さっきもお話ししたように、既存の銀行もネット銀行もアプリがあって、ひと通りの取引ってできるんですよね。だからこそ、そうした取引のプロセスの中で、どれだけフリクションを感じさせないか。何度も認証したり、入力する項目が多いとかを、どれだけそぎ落とせるか。例えば何かをするのに3つくらいステップを踏まないといけないものが、1つになるだけで、多分全然違う感覚だと思うんですよね。さらにみんなの銀行では、デザインにもすごく力を入れています。今の人たちって、説明書とか使い方なんか特に見なくたって、触っているうちに覚えるみたいなところがあるじゃないですか。表面上のデザインだけでなく、機能同士のつながりなんかも意識して作っています。

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――そういう感覚的なところって、銀行って一番遠いところにあったんじゃないかという印象があります。そこを両輪で考えていかれると。

永吉:はい。これまでの銀行でも、お客さまのニーズとか声とかはたくさん集まるんですけど、全部に応えられるかというと、少しずつ進化はしていますが、なかなかドラスティックには変えられない。なぜなら既存の商品とか、その後ろ側の業務プロセスとか、それが動いているシステムとかが密接に絡み合っていて、簡単に変えることができないんです。銀行は150年くらいの歴史の積み重ねでできているので(笑)。新しい銀行ではそういった制約や前提条件がない分、お客さまの声をいかに早く取り込んで、まずは使ってみてもらう。こうじゃないとなったら、また次のアクションを起こしていく。そんなサイクルをどれだけ速く回せるかというところがチャレンジですね。

たった1万円で企業内起業をしたワケ。

――今でこそ、そう言えますが、当初は大変だったのでは。

永吉:ほんと、そうなんです。さかのぼること5年ほど前、私のポケットマネーの1万円を出して「iBankマーケティング」っていう会社を作りました。

それからの5年間の経験がみんなの銀行にそのまま活きているなって思います。「企業内起業」というカタチだったのですが、グループ内でそんな実績なんて当然ありません。でもふくおかフィナンシャルグループのトップ(取締役会長兼社長 柴戸隆成)自ら、「新しいことをするには、まずやってみる、任せてみないとできないよね」ということで、やらせてもらえたわけです。

――社長、すごい。それまではどんな部署にいたんですか?

永吉:当時私は、銀行本体の経営企画部門にいました。ここでは何か新しい企画をして承認されたら、それをカタチにする部門にお渡しして、また次の企画をする、といった仕事だったんです。ただ私が5年前に考えた新しいサービス・事業は、FinTechの走りの頃でもあり、銀行の延長線上にはないビジネスも含まれていたので、銀行内でやった事のある人がいなかった。なので誰もやり方や答えが分からない。だったら「企画したお前がカタチにしてこい」と(笑)。すごく異例なことなんですけどね。

制約のない世界=責任のある世界。

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――そうして外に切り出されたわけですね。

永吉:銀行の外に会社を作ったので、任せてもらえる。先ほど服装やオフィスの内装・レイアウトの話をしましたけど、銀行の中にいたらそんなことはできなかった。私に裁量が与えられたから、チャレンジできたわけです。それも1回やって終わりじゃなくて、連続で。なのでいちいち箸の上げ下ろし的な制約は受けないんですけど、一方で、ものすごく責任がある。会社として独立しているので、事業が上手くいっているのかどうか、きちんと黒字化されているのかどうかも、ガラス張りのように見えてしまうわけです。

――外に会社を作っているから。

永吉:そう、これが例えば大企業の中の新規事業の立ち上げとかだと、そのあたりの状況がよく見えない。コストばかりかかっていて赤字かもしれないのに「お客さまが増えているから上手くいってる、よしよし」みたいなこともあるので。

――なるほど、シビアなんですね。

永吉:トップからは「失敗してもいいから(どんどんチャレンジしろ)」と言われていますけど、任された方は当然、失敗を前提にやるわけにはいかない。だから当初からいるメンバーは、みんな目の色が違いますね。お客さまのために良くしていこうという思いもすごくありますが、もうひとつはビジネスとして、自分たちの会社をしっかりと成長させて、グループに貢献できるようにしないといけないねという、責任感みたいなものがすごく強いんです。今でもその当時のメンバーが中核になって若手を引っ張っていってくれています。みんなの銀行でも、こうした経験があるメンバーを入れて、脈々とその遺伝子を引き継いでいっています。

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――今回、一緒にインタビューしたIT部門の責任者である宮本さんも新しい銀行の中核メンバーのひとりですね(宮本さんのインタビューは6月14日公開予定!)。そんな彼らとのチームワークも強みなのでしょうか。

永吉:やはりプロパーの銀行員だけでできることって、限られているんです。システムがつくれるわけでも、デザインができるわけでもない。だから最初はそういった人たちを巻き込みながら、いろんな人とパートナーを組んでカタチにしてきました。今は少しずつ内製化をしていくということで、新しいメンバーがどんどん入ってきています。みんなの銀行は、銀行出身の銀行員が4割しかいなくて、それ以外の人が6割。これからもっとその割合とスピードを加速するために、いろんなバックグラウンドをもった人たちと、一緒に仕事をしようとしているところです。

「共感」があるから、前に進んでいける。

――社会も多様性が大切と言われていますが、実際には大変ですよね。

永吉:今100人ちょっといますけど、このプロジェクトがスタートしてまだ2年も経ってないんですよ。本来であればこのような新しいプロジェクトを、いろんなバックグラウンド、会社から集まってきたメンバーでやるのって、すごく難しいと思う。しかも今、コロナ禍でコミュニケーションの制約もあるわけなんで。

――そのような難しいことを実現できているのは、何だと思いますか?

永吉:やっぱり、銀行をゼロからつくるんだというメッセージや、「みんなに価値あるつながりを。」というミッションに賛同して、これらを一緒に実現したいと思ってくれているメンバーが、集まってきてくれているからでしょうね。本当に共感して、なんとか実現したいという想い、ベクトルだけで前に進んでる。それは、間違いないと思います。

――では最後に締めていただいて。開業への意気込みを教えてください。

永吉:みんなの銀行が世の中に出て、皆さんから「おおっ!」と言ってもらえるかどうかは、これまでの「銀行」をバックグラウンドとしながらも、新しい銀行のカタチを探求するために、如何に「銀行らしさ」から脱却できるかにかかっていると思うんです。
デジタルによって Re-design(再デザイン)Re-define(再定義) された新しいアカウント(口座)につながることで、

 お金に対する マイナス(フリクション)がなくなり、
 お金に対する プラス(インサイト&レコメンド)が得られる。

私たちが目指しているのは、お客さまがミニマルで質の高い人生を送るために必要な「価値あるつながり」を提供することなので、そのために必要なことなら、何だってチャレンジしますよ(笑)。
お客さまが今は気付いていない「次に」欲しいと思うモノを、他の誰よりも「先に」カタチにしていくことが、私たちの志なので。

IT責任者、宮本執行役員のインタビューへ続く


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※本文中の写真は、感染症対策を徹底のうえ撮影しています。


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