[銀行の利用実態調査]複数口座保有している人は何割?銀行選びで重視することは?
こんにちは、マネーインサイトラボです。デジタルネイティブ世代のお金事情に関する調査・研究を行っています。
第8回のリサーチでは、「銀行の利用実態調査」についてご紹介したいと思います。
日本では成人の98%が銀行口座を保有(※)していますが、利用者は銀行とそのサービスをどのように捉え、利用しているのでしょうか。Z世代(19~27歳)、Y世代(28歳~43歳)、X世代(44~59歳)の世代別に調査を実施しました。
銀行のイメージ「信頼、長期的な関係、伝統・歴史、便利な機能」
はじめに、銀行に対するイメージを調査したところ、全世代に共通して「信頼できる」「長期的な関係が築ける」「伝統・歴史がある」「便利な機能を提供している」という“堅実さ”“便利さ”を感じるイメージが強いことがわかりました(図1)。
逆に、「革新的である」 「カジュアル」「オリジナリティがある」といった“新しさ” “気軽さ”を感じるイメージは全体で2%以下と低い結果となりました。 人々は銀行に対して、便利で信頼性がありずっと利用していくことができるが、敷居が高く新しさに欠けるというイメージをもっているようです。
その中でZ世代を見てみると、元のパーセンテージは低いながら、“新しさ”“気軽さ”のイメージを持っている人の割合が他の世代より高く、また「便利な機能を提供している」についても全世代で最も多くなっています。
Z世代はスマホアプリで銀行を利用することが当たり前で、銀行が他業種と連携して便利なサービスを提供していることも珍しくないという時代から使い始めているため、それが銀行へのイメージに反映されているのかもしれません。
「複数口座持っている」9割弱、Z世代の4分の1は1口座のみ
ここからは、銀行の利用実態を世代別で見ていきます。
保有する銀行口座の数を調査したところ、2口座以上持っている人は全体で9割弱と多いことがわかりました(図2-1)。
X・Y世代は2口座もしくは3口座保有している人が合わせて60%弱と多く、4口座以上の人も合わせると9割の人が複数の口座を保有しています。Z世代は2口座保有が40%と最も多かったですが、1口座のみの人の割合も25%と全世代で一番多く、他の世代と比べて口座の保有数が少ない結果となりました。
実際に使っている銀行口座の数を見てみると、X・Y世代は2口座使っている人が40%弱と最も多く、3口座以上使っている人も一定数いることがわかります(図2-2)。
それに対して、Z世代は1口座のみ使っている人が42%と最も多く、2口座使っている人と合わせると8割以上となり大半を占めます。
Z世代は他の世代と比べるとまだ収入が少なく、使う金額・用途も限られているため、多くの口座を保有してお金を管理する必要がないことが理由として考えられます。
口座開設のきっかけは「就業後の給与受取」が最も多い
続いて、各世代の銀行口座を開設したきっかけ上位3つを見ていきます(図3-1)。
1つ目の口座はどの世代も「就業後の給与受取」が1位で、Y・Z世代では「アルバイト代受取」もランクインしています。
また、「親が開設」も全世代でランクインしており、一定年齢までは親権者が代わりに口座を開設できるため、親が「子どもが生まれたのでひとまず開設した」「子どもの進学を機に開設した」というケースも多いのではないでしょうか。
2つ目以降の口座も引き続き、給与受取というきっかけが全世代で1位になっていますが、1つ目と比べて「貯蓄用」や「お金の管理」の割合が高くなるのが特徴です(図3-2)。
1つ目はお金を受け取れる口座をまずは1つ持っておくために開設し、2つ目以降は将来のことを考えてお金の管理や貯蓄を始めるという意識で開設することが多いようです。
複数口座保有者の75%が目的別に口座を分けている
では、複数口座を持っている人は実際どのように使い分けているのでしょうか(図4)。
まず、複数口座を持っている人のうち、75%の人が「目的別に口座を分けている」ことがグラフからわかります。
Z世代に注目すると、預け先を分散してリスクを減らすために口座を分けているという人の割合がX・Y世代よりも少ないことがわかります。また、銀行口座の使い分けを特に意識していない人の割合が多いのもZ世代の特徴です。
若いZ世代は他の世代に比べて収入や貯蓄が少ないのでリスク分散を意識している人や口座を分けてお金を管理する必要があると考える人が他の世代ほど多くはないようです。
銀行選び「自宅から店舗・ATMが近いこと」を最も重視
ここまでの調査で、複数の銀行口座を持ち、それらを目的別に使い分けている人が多いことがわかりましたが、何を重視して銀行を選んでいるのでしょうか(図5)。
まず全体で見ると、65%の人が自宅から店舗・ATMが近い銀行で口座を開設したいと考えていることが分かります。
Z世代を見ると、他の世代と比較して際立ってパーセンテージが高い項目がなく、銀行を選ぶ際に重視する要素が少ないことがわかります。
そのなかでも、Z世代が他の世代と比較して特に重視していないのは、「店舗・ATMが自宅から近いこと」「店舗・ATMが職場から近いこと」「預金金利が高いこと」の3つとなっています。
スマホでの利用がメインで店舗への来店頻度が低いこと、スマホ決済でのキャッシュレス利用が多く現金の出金頻度が低いこと、貯蓄が多くないため預金金利が高くてもメリットが少ないことなどがこれらの要素がZ世代にとって他の世代ほど銀行選びに影響しない理由となっているのかもしれません。
店舗ATM、銀行アプリは7割以上が利用、Z世代はコンビニATMも
続いて、銀行のサービスの利用状況を見てみましょう(図6)。
全体の利用率が7割を超えるのは「店舗のATM」と「銀行アプリ」の2つで、逆にそれ以外のサービスは5割以下となっています。
なかでも、Z世代は「有人窓口」と「銀行のWebサイト」の利用が非常に少ないことがわかります。
これは、Z世代が高額の入出金や振込、資産運用など有人窓口を利用する必要があるサービスの利用が少ないこと、主にスマホアプリを利用しているためインターネットバンキングを利用する機会が少ないことが理由として考えられます。
Z世代は「コンビニ等のATM」の利用率が高くなっており、買い物のついでに気軽にお金の出し入れができる銀行以外のATMを利用する傾向が大きいようです。
月額制サブスクで使いたいサービスは「ATM手数料無料」
銀行の基本的なサービスの利用状況を見てきましたが、利用者が「こんなサービスがあればお金を払ってでも使いたい」と考えるのはどのようなものでしょうか(図7)。
月額料金を支払うサブスクリプション型でも利用したいサービスを尋ねたところ、最も多いのは「ATM手数料が無料になる」で6割の人が使いたいと回答しました。
逆に、金融知識が学べるサービスは3項目ともすべて5%未満とニーズが低くなっています。現代では、Webメディアや動画サイトなどで無料で多くの情報が発信されており、お金をかけて金融知識を学びたいと考える人が少ないためと想定されます。
また、X・Y世代では40%を超えて人気の高い「預金の金利が上がる」はZ世代では25%に留まっています。これは、やはり元になる預金が他の世代に比べて少ないためお得感が感じられにくいためと考えられます。
Z世代は、お得なクーポンの利用やカードのポイント還元率のアップは利用したい人の割合が高いので、現在の金融資産の多寡に関わらず金銭的なメリットが受けられるサービスであれば、Z世代のサブスクリプション利用に繋がりそうです。
金利が上がっても「何もしない」過半数超、Z世代は特に顕著
2024年3月に日銀がマイナス金利政策を解除し、17年ぶりの利上げに踏み切ったことで金利が上がる動きが出ています。
そのような中で、金利が上がったら取りうる(既に取った)行動についても最後に訊いてみたところ、金利が上がっても特に行動する予定はない(行動しなかった)という人が過半数以上という結果になりました。Z世代は特にその割合が多く、他の世代よりも10%以上多い62%に上ります(図8)。
ここでも、Z世代が他の世代より貯蓄が少ないことや、ローンを借りるほど金額の大きい買い物(家や車など)をしている人が多くはないことが影響していると考えられます。
おわりに
今回の調査で、銀行口座を2口座以上保有する人が9割いて目的別に使い分けていることがわかりました。銀行口座を開設するのは給与やアルバイト代の受取が始まるタイミングやお金の管理・貯蓄を意識し始めるタイミングが多いため、銀行はそれに合わせた口座獲得施策を行っていくことが必要といえます。
Z世代は、収入や貯蓄が他の世代に比べて少ないため、口座保有数も少なく、使い分けも意識していないことが今回の結果から窺えます。
また、同じく貯蓄が少ないことが理由で、預金金利が上がることをメリットとして感じにくい傾向があります。現在の金融資産の多寡に関わらず金銭的なメリットが受けられる手数料無料やクーポン、ポイント還元などのサービスがあれば、Z世代の口座開設やサブスクリプション利用に繋がりそうです。