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新NISAの利用実態調査 年収の高さによって利用率が異なる。分岐点は年収400万円

こんにちは、マネーインサイトラボです。デジタルネイティブ世代のお金事情に関する調査・研究を行っています。

マネーインサイトラボ
ふくおかフィナンシャルグループ傘下のみんなの銀行iBankマーケティングが共同運営するお金に関する調査・研究組織です。デジタル時代における、人々のお金に関する意識・価値観・行動の変化や、新しい金融サービスの可能性について新たな視点を見出すことを目的に活動していきます。

第7回目のリサーチでは、「新NISA(少額投資非課税制度)の利用実態調査」についてご紹介したいと思います。

今年から新NISAがスタートし、より一層注目を集めていますが、この1年間でNISAの認知度や利用率に変化はあったのでしょうか。Z世代(18~26歳)、Y世代(27歳~42歳)、X世代(43~58歳)の世代別に調査を実施しました。

■ Z世代
1990年代中盤から2010年代中盤生まれ。生まれながらにしてデジタルネイティブであり、幼いころからスマートフォンやSNSに慣れ親しんでいる。
Y世代
1980年代序盤から1990年代中盤生まれ。幼少期~青年期にインターネットの本格普及を経験し、ネットを当たり前に使いこなせる。
X世代
1960年代中盤から1970年代終盤生まれ。子どもの頃をアナログ環境で過ごし、成人してからインターネット環境に触れるようになった。

近年の価値観やライフスタイルに大きく影響を与えているとされるデジタル環境の変遷を基準にした世代で分類

NISAの認知度、9割以上が「知っている」と回答

図1

NISAの認知度について調査したところ、全体の半数以上が「制度の内容についておおよそ知っている」と回答(図1)。

また「名前だけ知っている」という回答も4割ほどあり、程度の差はあれど、全体の9割以上がNISAを知っており、その認知度は高いと言えます。ただし、世代別に見てみると、Z世代の認知度がX・Y世代に比べて低く、13.3%が「聞いたことがない」と回答しました。

利用率は全体の4割、前年よりも増加

では実際の利用率はどのくらいなのでしょうか。調査結果を世代別と年収別に分けてみました。

図2

2024年3月に実施した今回の調査では、全体の4割が利用していることが分かりました(図2)

それ以外に「利用を検討している」「口座は開設したが未利用」「過去に利用していた」を合わせると半数以上となり、NISAへの関心の高さが分かります。

世代別に見てみると、やはり認知度と連動しているのか、Z世代の利用率が最も低く、18.7%。しかし「利用を検討している」と答えた割合は他の世代よりも高く、Z世代の潜在的なニーズが伺えます。

図3

また、2023年4月にマネーインサイトラボが発表した調査結果での利用率と比較してみると、Z世代にはほぼ変化がなかったものの、X・Y世代の利用率はこの1年で35%から42%に増加(図3)

この1年だけでも利用率の伸びを確認できました。

年収の高さによって利用率が異なる。分岐点は年収400万円

図4

年収別に見ると、概ね年収が高くなるほどNISA利用率が高くなっていることが分かります(図4)

「現在利用している」割合と「利用していない」割合を年収ごとに比較してみると、年収200万円未満では利用していない割合の方が高く、年収200万円以上400万円未満では拮抗し、年収400万円以上になると利用している割合の方が大きく上回っています。

NISAの利用率の分岐点は年収400万円付近のようです。

新NISAを機に利用を開始した割合はZ世代が最も多い

ここからは、現在NISAを利用している人の傾向を深堀していきましょう。

図5

NISAを「現在利用している」と答えた方に、利用開始時期を伺ってみたところ、全体の約8割が新NISA開始以前から利用していることが分かりました(図5)。

ただし、Z世代は新NISAを機に利用を開始した割合が約3割と、他の世代よりも高いようです。

若年層ほどアプリやWebでNISA口座を開設する傾向がある

NISA口座の開設は各金融機関の窓口だけでなく、アプリやWebでも手続き可能です。現在の利用者はどのようにして口座開設したのでしょうか。

図6

今回の調査で最も多かったのは「金融機関の窓口での開設」でした。特にX世代の割合は約6割にも上ります(図6)。

しかしY世代を見ると、「金融機関の窓口での開設」と「アプリ・Webを利用して自分で開設」した割合の差が縮まっています。Z世代もアプリ・Webを使った口座開設の割合が高いですが、知人や金融機関の職員に操作を習いながら口座開設をした割合がY世代よりも高いようです。

Z世代は、他の世代より金融リテラシーが低いと感じており、プロや知識のある人にしっかり聞いた上で始めたいと慎重に考えていた、と推測できます。

Z世代は他の世代より金融機関選びに友人・知人のすすめを重視

NISA口座は1人につき、1つの金融機関でしか開設できません。ではその金融機関はどのような基準で選ばれているのでしょうか?

図7

各世代のTOP5は上の図の通りになりました(図7)。どの世代も「自分が普段利用している口座がある銀行だったから」が最も多い結果に。次いで、X・Y世代は、「金融機関の窓口で勧められたから」と答えた割合が高く、この2つの連動性も推測できます。

一方Z世代は「友人・知人に勧められた」と答えた割合の方が高い結果となりました。またY世代の特徴として、取引手数料の低さやクレジットカードでの支払い可否など、「お得感」を重視している傾向が見えます。

NISA利用で将来への不安「解消されている」、Z世代の割合が多い

2022年11月にマネーインサイトラボが発表した調査結果で、多くの方が「お金の悩みや不安を感じたことがある」ということが分かりましたが、NISAを利用することによって将来の不安は解消されているのでしょうか?

図8

どの世代も多くは「分からない」と回答し、4人に1人以上が「解消されていない」と回答しています(図8)。

ただし、Z世代は他の世代に比べて、ある程度将来への不安が解消されていると回答した割合が高いようです。

Z世代の4分の1は新NISAが始まったことを知らない

続いて、現在NISAを利用していないと回答した方に「新NISAを機にNISAを利用したいかどうか」を伺ってみました。

図9

全体の半数が「まだわからない」と回答、17.4%が「利用したいと思わない」と回答し、消極的であることが分かります(図9)

特にZ世代は約4人に1人が「新NISAが始まったことを知らない」と回答し、ここにもX・Y世代と比べて認知度が低いことが表れていました。

では、利用したくないと思う理由はどこにあるのでしょうか?

利用したくない理由の多くは「投資への知識不足」

図10

最も多い回答は「自分の知識が足りないから」(図10)。次いで「仕組みが分からないから」「お金がないから」という理由が続きます。

2023年3月に実施した調査でも同じ理由が上位に並んでいることから、依然として自身の投資に対する知識や制度に対する理解不足が障壁となっているようです。世代別に見ると、投資に対する知識や制度に対する理解不足の傾向はZ世代で強く見られます。

また全体で4番目に多い「損したくないから」という理由は、Z世代が他の世代よりもやや少ないことが分かりました。バブル崩壊やリーマンショックなどの金融危機を身近で経験していない世代であることが理由のひとつと推測できますが、Z世代はある程度のリスク許容度があるとも捉えられます。

これらの結果から、Z世代にNISAや投資の仕組みを分かりやすく伝えることができれば、NISA利用へのハードルを下げられる可能性が見えてきました。

売却した理由、最も多いのは「生活費としてお金が必要になった」

最後に、「過去にNISAを利用していたが、現在は利用していない」と回答した方の現在の資産状況や今後の意向を探ってみましょう。

図11

まず、過去に運用していた資産の現在の状況を伺ってみました。今回の調査では、半数以上の方が全て売却済みのようです(図11)

図12

売却した理由を伺ってみると、最も多かったのが「生活費としてお金が必要になったから」(図12)。必要な時にいつでも売却できるNISAならではの理由です。

次いで「売却時に評価額が高くなっていたから」が続く一方、「評価額が下がったため」と回答した方も一定数いることが分かりました。

NISAの利用を再開したい人は3割強

過去にNISAを利用していたものの、現在は利用していない方に「新NISAを機にNISAを再開したいかどうか」を伺ってみました。

図13

4割以上が「まだ分からない」と回答していますが、「利用を検討したい」「利用したいと思っている」と回答した割合が全体の3割と、未利用者よりも利用意向は強いようです(図13)

おわりに

まだNISA未利用者のほうが多いですが、その認知度は上がってきており、前年の調査と比較しても利用者の数は着実に増加傾向にあるようです。また、NISAをはじめとした資産運用はあくまでも余剰資金で行うため、NISA利用率には年収の高さも大いに関係していることが改めて分かりました。

Z世代は、投資の知識や制度理解について、他の世代に比べて不足していると感じている方もまだまだ多いため、NISAの認知度の高まりと共に若い世代の投資への興味やリテラシーが向上していくことで、NISA利用者はさらに増えていくのではないでしょうか。

調査概要

■調査対象:
Z世代(18~26歳)、Y世代(27歳~42歳)、X世代(43~58歳)
■調査集計期間:
2024年3月8日(金)~3月18日(月)
■調査機関:
iBankマーケティング株式会社
■調査方法:
インターネット調査
■有効回答数:
6,167サンプル(Z世代600名、Y世代1,730名、X世代3,837名)

各データの内訳は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計が必ずしも100%にならない場合があります。







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