海外事例に見るデジタルバンクの潮流――みんなの銀行×アクセンチュア トークセッション(2/3)
――こんにちは、『みんなの銀行 公式note』編集長兼広報の市原です。アクセンチュアさんをお迎えして行われた「みんなの銀行 記者発表会」トークセッション連載第1回では、デジタルバンクの世界的な潮流をテーマとしてお届けしました。第2回では、欧州デジタルバンクの収益状況や商品・サービス構成についてご紹介します。
↓ 連載第1回はこちら ♪
トークセッション登壇者
・横田浩二氏(株式会社みんなの銀行 取締役頭取)
・永吉健一氏(株式会社みんなの銀行 取締役副頭取)
・中野将志氏(アクセンチュア株式会社 常務執行役員 金融サービス本部 統括本部長)
・森健太郎氏(アクセンチュア株式会社 ビジネス コンサルティング本部 マネジング・ディレクター ストラテジーグループ 銀行 プラクティス日本統括)
永吉(みんなの銀行/モデレーター):これまでになかった新しいジャンルの銀行、デジタルバンクの盛り上がりは、海外では欧州が先行し、米州・アジアと続いています。そして2021年、日本でも我々みんなの銀行が誕生しました。世界のデジタルバンクの数はどんどん増えていますが、実際に「収益はどうなの?」については、皆さん興味があるのではないでしょうか。このあたりがどうなっているのか、中野さん、お聞かせいただけますか?
欧州デジタルバンクの収益状況
写真:アクセンチュア中野氏
中野(アクセンチュア):はい。欧州はずっと低金利で、経済成長も非常に低かったのですが、一方で規制緩和もあり、さまざまな企業や大手銀行が技術を使って「新しい銀行、デジタルバンクを起こすぞ!」という動きが、この数年非常に盛んだったんですね。この動きを見てきましたが、そろそろ明暗が分かれてきた頃かなと思っています。
(上の)グラフの左側、グレーの部分が主に独立系のネオバンクです。これまで銀行業をやってこなかったが、技術力を活かして新しい銀行を立ち上げたグループです。「フィンテックバンク」と呼ばれたりもします。
グラフの右側、黄色の部分が大手資本傘下のデジタルバンク(大手銀行が別の会社として立ち上げたデジタルバンクや、非銀行傘下のデジタルバンク)です。
このグラフは「収益」を示しているのですが、左側(独立系ネオバンク)はあまり収益が上がっていない一方で、右側(大手資本傘下のデジタルバンク)は収益が非常に上がっているのが分かります。もともと保有する顧客基盤も理由の一つですが、「技術だけでは勝てない」ということを示しているように思います。この統計はコロナ禍以前のデータなので、昨年くらいからはさらに右側の大手資本傘下のデジタルバンクに顧客が寄ってきています。「大手銀行は倒れないであろう」という安心感もあるということでしょうか、特に大手銀行傘下のデジタルバンクが伸びてきているのが、最近の動向の特徴かなと思います。
永吉:デジタルバンクとネオバンクの収益状況から、どっちが伸びているのか分かりました。では商品性だったり、5年後の営業利益の違いなどはどうなのでしょうか。
デジタルバンクの商品・サービス構成
中野:(上のスライドの)上側がネオバンク、下側が大手銀行傘下のデジタルバンクです。そして左側は「設立5年後の営業利益」を、右側は「商品ラインナップ比較」を表しています。商品ラインナップ比較の左側が決済、送金、引き落とし、デビットなどの手数料収入に関する商品で、右側が消費性ローンや住宅ローンなどの金利収入となる商品です。
これを見ますと、ネオバンクは決済などの手数料収入中心のサービスが基軸にあり、一方で大手銀行傘下のデジタルバンクは金利収入中心のサービスが基軸。後者はローンをうまく使って収益を上げています。これが何を意味しているかというと、現時点では、技術だけではなく、金融機関が元々持つ様々な金融サービスに関するスキルや銀行経営のノウハウがないと、この世界では収益面でなかなか追いつけないのでは、と我々は考えています。
森(アクセンチュア):加えて、「顧客体験の作り方」が重要になってくるのではないかと思っています。銀行の収益源といえば、(スライドの通り)預金と貸出の利ザヤである金利収益、ローンですよね。でも顧客体験の作り方というのは、これまでの銀行とは全然違う。どれだけフリクションレスに設計しても、既存銀行のようにわざわざその銀行のチャネルに行って、そこで何かをしなきゃいけないという行動と、自分の生活動線に自然と組み込まれていて行える体験はまったく違うものになりますよね。裏側にある乾いた数字は「金利収入」という形で出てくるが、表側にある「顧客体験」というものを、どうリデザイン(Re-design)していけるのかが重要だと思っています。
永吉:「金融機関が持つ金融サービスに関するスキルや銀行経営ノウハウ」という意味では、ふくおかフィナンシャルグループは140年を超える歴史を持つ福岡銀行をはじめとする銀行で形成されており、過去培ってきた銀行経営のノウハウ、厚い資本などを保有しています。これらを最大限に活用することで、我々みんなの銀行もデジタルバンク設立にチャレンジできたわけなんですが。横田さんはこのスライドや、銀行の顧客体験のリデザイン(Re-design)をどうとらえていますか?
写真:永吉副頭取(左)、横田頭取(右)
横田(みんなの銀行):ここから得られる示唆としては、既存銀行にはビジネスモデル、儲けの仕組みというのがあり、それをリデザイン(Re-design)した姿が、このスライドにある大手銀行傘下のデジタルバンクかと思います。どこも第一歩は、BtoCのリデザイン(Re-design)から始まると思いますが、勝負のカギとなるのは、その次にリデファイン(Re-define)できるかどうかではないでしょうか。自戒を込めてですが、我々みんなの銀行もちゃんとステップを踏んでいけるかにかかっていますね。
永吉:デジタルバンクにおいては一日の長が銀行傘下サイドにあって、我々のバックボーンであるふくおかフィナンシャルグループが培ってきたモノが活かせるのですから、みんなの銀行もいち早くリデザイン(Re-design)、リデファイン(Re-define)にチャレンジしていきたいですね。
ーー連載第2回では、独立系ネオバンクと大手資本傘下のデジタルバンクの収益状況の差や、商品・サービス構成の違いをテーマにしてトークが進行しました。次回の最終回では、デジタルが構築するバンキングシステムと顧客理解に基づくエコシステムの考え方について、海外事例をあげながらお届けしていきます。
↓ トークセッション連載第3回(最終回)に続く
資料提供:アクセンチュア
撮影:菊地英二
※本トークセッションは、感染症対策を徹底のうえ実施しています。