お金のことを話してみる「みんなの銀行の日」レポート(3/4)
――みんなの銀行では3月7日を「みんなの銀行の日」として記念日制定し、「#お金のこと話してみよう」をテーマとしたアンケートやトークセッションを行いました。全4回でお送りする本連載(第3回)では、3月7日に行ったトークセッションの模様を引き続き紹介していきます。※スピーカーの皆さまのご了解はいただいております。
Clubhouseトークセッションのスピーカー
上野直彦氏(一般社団法人 日本ブロックチェーン協会事務局長)
中村仁氏(株式会社400F 代表取締役CEO)
福島良典氏(株式会社LayerX 代表取締役CEO)
永吉健一(株式会社みんなの銀行 副頭取)
↓ 「みんなの銀行の日」レポート連載第1回・第2回はこちら
「ロボアド」が日本に与えた影響は大きく2つある(中村仁さん/400F代表取締役CEO)
永吉:ロボットといえば、(中村さんが2020年まで代表取締役社長を務められていた)『お金のデザイン』さんではTHEO(テオ)というロボアドバイザーのサービスもされていましたが、極めてシンプルなお任せ運用だと思います。今の日本で、ロボアド(ロボアドバイザー)や投信一任サービスってそんなにたくさんはないと思うのですが、これについてはどうですか?
中村:ロボアドが日本に与えた影響は大きく2つあるかなと思います。1つは「資産運用って簡単にできるじゃん」という認知を高めた点、もう1つはみんなの銀行や福島さんのやろうとされている「UI/UXへのこだわり」だと思います。
既存のサービスって申込のところで離脱する人がとても多いので、いかにしてその部分をシンプルにして、資産運用の一歩を踏み出してもらえるかが極めて大事です。意外とこの点をないがしろにしている業界は多いのではないかと思います。「ポートフォリオがどうだ」とか「運用パフォーマンスがどうだ」とかの付加価値はもちろん重要ですが、日本の証券口座は人口比でいくと20%くらいしかない中で、80%の人がなんでやったことないのかっていうのを紐解いていったときに、ポートフォリオや運用パフォーマンスの問題ではないっていうことに気づかないといけない。これは僕がすごく思っていることですね。
永吉:まさに福島さんは、Fintechやデジタル、キャッシュレス、さらに新しいブロックチェーンなどの技術を使って、プロセスを抜本的に変えていく、いわゆるDXのお手伝いをLayerXで取り組まれています。みんなの銀行でも、銀行取引・金融取引における「面倒くさい、煩わしい、手続きが多い」みたいな「フリクション」を、どれだけなくせるかというところにチャレンジしていて、銀行をゼロベースで作っています。今まで100年以上やってきた銀行のプロセスを省力化する一方で、規制業種であるからこそ「銀行としてやらないといけないところ」はしっかり残して取り組んでいます。5月下旬のサービス提供開始時には、フリクションレスの銀行サービスをぜひ使っていただき、皆さんのお声をいただきたいなと思っています。
【Keyword 4】収支・家計の管理
永吉:次に4つ目のキーワード「収支・家計の管理」に関するツイートを見ていきましょう。家計簿アプリ、複数口座を一括管理できるアカウントアグリゲーションのサービスなどを使うようになった方たちから次のようなコメントがあります。
便利になった
利用状況が簡単に確認できるようになった
不正利用の検知で役立っている
同時に、「決済アプリ」についてのコメントも見られますね。
ほとんど現金を使わないキャッシュレスの生活になった
これまでお財布からお金を出していると、何にいくら使っているか把握しにくかったけど、電子決済のおかげで履歴・明細が残るので管理しやすくなった
このあたりについて、福島さんはデジタルやブロックチェーンなどを使って新しい世界を作ろうとされているので、変化とかご自身が目指しているところをお話し伺えますか?
○○ペイの裏はロボアド。キャッシュレスでデジタルの資産運用は楽になる(福島良典さん/LayerX 代表取締役 CEO)
福島:先ほどの中村さんの話にあがった「投資のハードルが高い」というところは、すごく解決したい課題だなと思っています。先ほどポートフォリオの話をしているので恐縮ですけど、日本って個別投資のハードルがとても高いんですよね。
例えば(LayerXでは)三井物産さんとかと一緒に合弁で事業をやっているのですが、彼らが持っているアセット(資産)に機関投資家が投資しています。商社はアセットヘビーになりたくないので、機関投資家にオフバランス(資産効率の改善などのために、資産または取引について、貸借対照表=バランスシートに計上しない状態)しています。直近だとメルペイさんが、300億くらいの大規模なオフバランスをしましたが、日本の商社さんも結構不動産投資を行っていて同様にアセットをオフバランスされています、他にも、星野リゾートさんとか。良いアセットって、個人の方は投資できないんですよね。個人の方が投資したい場合は、いくつものアセットマネジメント会社を通して、その中のリート(不動産投資信託)のポートフォリオ通して投資したり、とか。良いアセットに投資するハードルがとても高いんです。
一方で、最近は不動産クラウドファンディングとか、あとは貸付ファンドのオンラインマーケット『Funds(ファンズ)』さんのようなサービスが出てきて、数秒で数億円が売れるということが実際に起きています。個人の投資家の方も、知識が付いてきていますよね。中村さんのロボアドなど「お金のアドバイス領域」では、証券口座を持っている2割の方ではなく、持っていない8割の方にどうマーケットを広げるかという話をしていましたが、僕らLayerXではどちらかいうと、(証券口座を持っている)2割の中の成熟している人に向けて、彼らの「投資できるアセットが実はすごく限られている」という課題解決を考えています。
ただアセットマネジメント会社の運用コストっておそらく100年前と今でも何にも変わってないんですよ。人手で管理していて、お金の決済のシステムとかも古くて。そこで僕らは、完全にデジタルのアセットマネジメント会社を作っています。すでに業務の中では、紙が1枚も必要なく、契約書も稟議書もデジタル。請求書の処理も含めて全部デジタルでやっています。紙がないアセットマネジメント会社って、世界初かもしれない。少なくとも日本では初めてのことをやっています。コストを極限まで落とし、浮いたコストは個人投資家のリターンに全部還元していこうっていうことを、ブロックチェーン含めていろんな技術を使ってやっているのがLayerXの取組みですね。
中村:ロボアドのサービスをやっていて思うのですが、裏側のコストが下げられないってめちゃくちゃダメですよね。
福島:僕らのサービスが成熟してきたら、OEM的に入れてください(笑)。
永吉:我々も資産運用のサービスってこれから考えていこうかなって思っているので、福島さんのところで良いサービスが出来上がったら、ぜひうちにも紹介してください(笑)。
福島:キャッシュレスが進むと、デジタルの資産運用がめちゃめちゃ楽になると思うんですよ。多くの人が使っている○○ペイでは、お金を貯めるサービスがありますし、僕もやっていますが○○ペイの「おつり」で投資できるサービスなんかもありますよね。そこで採用されているのがロボアドですね。
となると、今のキャッシュレスはまだ、金利も付かないし、クレジット的な後払いもできないんですが、一方で、「○○ペイ後払い」みたいな後払い型サービスもある程度出揃ってきている。後払いできて、○○ペイのポイントで資産運用できるようになってくると、これはもう「ほぼ銀行」なんですよね。
中国の若者は「ほぼ銀行の機能を持つAliPay」にお金を移し始めている(福島良典さん/LayerX 代表取締役 CEO)
福島:実際、中国の若者はお金をAliPayに移し始めています。そしてお金を増やすためにどんどん投資信託に換えていっていて、金利も3~4%ほど付いています。それを支払いで使えば、ほぼ手数料ゼロで普通のお金に戻せるんですよね。AliPayには後払い機能も付いているので、「今1万円しか持っていないけど3万円のものを買える」というクレジットっぽい使い方もできるんです。
こういう形でキャッシュレスがどんどん進むと、先ほど中村さんからお話のあった「資産運用を始めた半数近い人が、その後どうしたら良いか分からない」というインターフェース部分のハードルがめちゃくちゃ下がりますよね。お金を○○ペイに置いておくだけで、裏はロボアドが代わりに資産運用を行ってくれる。自分が支払う時、決済する時、送金する時だけお金、つまり現金的なマネーに変わる。一部では「シャドウバンキング」だと言って、中国で問題になっていますけど、日本でも、ある一定のサイズまではこういうエコシステムが○○ペイを中心にして突き進んでいくんじゃないかなって、僕は思っています。
永吉:そういう世界になってくると、「じゃあ銀行って何のためにあるの?」っていう話も避けられなくなってくると思います。僕たちは、日本におけるそういったお金の付き合いの中にある「フリクション」にメスを入れて、どこまでやれるかチャレンジしていきたいですね。銀行の立場から、そういう世界を実現できたらすごく面白いだろうなと。
キャッシュレスで日本の4段階先をいく中国では、逆に「銀行業が独自性・優位性」になってきている(福島良典さん/LayerX 代表取締役 CEO)
福島:実は銀行の役割みたいなところって、逆に中国で上がっているんですよ。中国では、ロボアドはインターフェースの問題が解決されるとたいした差がないので、Alipayがほぼ独占しているのが現状なんです。
決済プレーヤーは、後払いやクレジットを付けるところでしか儲からないので、WeBankやMYBankという銀行を作って、そこに独自のデータをためる。個人も法人も含めてそこで集めたお金を「どう融資するか」という、いわゆるバンキング業務そのものが独自性・優位性になってきているんですよね。
中国って、キャッシュレスにおいて日本の4段階くらい先を進んでいるのですが、4段階くらい先にいくと、めちゃくちゃ「バンキング大事です」という話が出てくる。なので、みんなの銀行さんの入り方とか、個人的にはすごくイケてるなって思います。
永吉:ありがとうございます(笑)。
↓ トークセッション連載第4回に続く