銀行にDropboxやTinderが付帯⁉ 海外チャレンジャーバンクをテーマにトークイベントしたよ(前編)/上野直彦氏・小林弘人氏・日下光氏・永吉健一
――こんにちは、『みんなの銀行 公式note』編集長兼広報の市原です。今日は、6月に開催したZoomオンライントークイベントの模様を、一部抜粋・編集してお届けします!
登場するのは、スポーツジャーナリストや漫画原作者として活躍される一方で日本ブロックチェーン協会(JBA)の事務局長をつとめられる上野直彦さん、『ワイアード・ジャパン』『ギズモード・ジャパン』などの多数の媒体を創刊されてきたインフォバーン共同創業者・代表取締役会長の小林弘人さん、エストニアと日本で行政のDXアドバイザーをつとめられたxID代表取締役CEOの日下光さん、そして国内初のデジタルバンク、みんなの銀行の事業をリードする副頭取の永吉健一の4名です。
「みんなの銀行」のファーストインプレッション。銀行は「格好良いかどうか」で選ぶ!?
永吉 みんなの銀行アプリを触ってみたり、PR動画をご覧になっての、皆さんのファーストインプレッションが気になっています(笑)。
上野 アプリをダウンロードして銀行口座の開設まで、実際に数分でできて、すぐに使えるんですよね。物理的な通帳、カード(キャッシュカードとデビットカード)が不要になるので、非常にシンプルなスタイルだなって思います。体験してみると、自分が知っている銀行とはまったく違う世界が見えてきました。
永吉 そこまで持ち上げていただけて……、嬉しいです(笑)。
小林 非常にミニマルに作られていますよね。「あれもできます」、「これもできます」と盛り込み過ぎてしまうサービスも多い中、みんなの銀行さんでは最低限の情報できちんと伝えられている。このホワイト&ブラックで統一しているトーン&マナーも、使ってみたい気にさせますよね。
日下 率直な感想として、銀行を「格好良いかどうか」の基準で選ぶ、という選択、ありかなって思いました。お財布だって、自分が格好良いと思うお財布を使いたい。だから銀行も、格好良い銀行を使いたい。僕は以前、エストニアに住んでいたのですが、その時にドイツ発のチャレンジャーバンク「N26」を使っていたのも、同じ理由でした。みんなの銀行にはそれと同じ空気を感じて、今ワクワクしています!
永吉 皆さん、ありがとうございます! みんなの銀行は5月28日にサービス提供を開始しましたが、おかげ様で順調な滑り出しとなりました。
金融業界に台頭してきた、フィンテック・ネオバンク・チャレンジャーバンク
永吉 先ほど日下さんから飛び出た「チャレンジャーバンク」は、比較的新しいワードで、その定義もまだ明確ではないのですが、我々なりに整理してみたのがこちらの図です。
永吉 今、金融業界における新たな動きとして、フィンテック・ネオバンク・チャレンジャーバンクの3つのタイプのプレイヤーが誕生してきています。中でもチャレンジャーバンクは、もともとフィンテックやネオバンクだったプレイヤーが、規制緩和等によって銀行ライセンスを取得し「銀行」へと変身したプロセスを踏んでいるので、我々デジタルバンクを標榜する「みんなの銀行」も、この「チャレンジャーバンク」に位置づけられるのか、いろんな角度から共通点や相違点を見ていきたいと思います!
デビットカード対決!? 物理的なメタルカードVSバーチャルカード
永吉 チャレンジャーバンクは欧米で先行して拡大してきていますが、Revolut、Monzo、Starlingの他、ドイツのチャレンジャーバンクN26も人気が高く、今日お集りの皆さんもよくご存じのチャレンジャーバンクですよね。
上野 ええ。特にN26には数年前から注目していて、その頃から小林さんと一緒に「N26のような銀行、日本でもできないかな」ってディスカッションしていたんですよ。そういえば今日お集りの皆さんって、N26の本社を訪問したことある人ばかりじゃないですか? 本社の階段の壁にはコードが描かれていましたけど……、あれには未来を期待させられました。
永吉 N26の「カード」についても、人気が高いですよね。N26では物理的なカード(Mastercardブランド)を発行していて、この決済手数料を軸にしたビジネスモデルを展開しているのですが、私が欧州視察に行った2019年当時は、確か、無料で発行できる透明のカードと、その他に、サブスクリプション型のプレミアムアカウントで発行されるブラックカード、金属製のメタルカードの3種類があったような……。日下さんは、今でも実際にお持ちなんですよね?
日下 持っていますよ! これがN26の、金属製のメタルカードです!
全員 おおっ⁉(笑)
小林 以前、N26の社員の方から、「メタルカード、格好いいだろう!」って自慢されましたよ(笑)。
永吉 私もN26本社で、やっぱり「格好いいだろう!」って(笑)。その時に面白い話を聞いたのですが、N26がサービス展開するEU加盟国、例えばフランスやイタリアでは、このメタルカードが有料なのに人気がある。その一方、おひざ元のドイツではまだそこまででもない、と。お金のかけ方に、国民性の違いも出ているようでした。
日下 そうですよね。このメタルカードを所持するために、日本円に換算して月額約2,000円の支払いが必要なわけですから、考えちゃいますよね。だから僕、N26の人に、「(無償のカードもあるのに)毎月約2,000円支払って、このメタルカードを所持することに、一体どんな意味があるのか?」と聞いてみたことがあるんですよ。返事はやっぱり、「メタルで恰好いいでしょ! 払う価値あるでしょ!」って(笑)。
全員 (笑)。
永吉 さて、N26が物理的なデビッドカードを発行しているのに対して、みんなの銀行では、スマートフォンアプリの中に、バーチャルなデビッドカード(JCBブランド)を発行しています。特徴的なのは、口座開設と同時にフリクションレスで自動発行されるということ。これは国内初の取組みでした。
永吉 デビットカードだけではなく、キャッシュカードもスマートフォンアプリの中にあるので、これらのカード類を郵送で受け取る必要もなく、スマートフォン完結型の世界観を目指しています。どちらが良いという議論ではなく、双方のサービスや機能の共通点・相違点を比べてみると、興味深いですよね。
「N26」と「みんなの銀行」の共通点あれこれ。アプリ画面で比較してみた!
永吉 ぜひ日下さんには、N26の実際のアプリ画面を見せていただきたいですね!
日下 これが僕の実際の銀行口座です! 2020年2月までエストニアに住んでいたので、その頃は、給料が出ると、一旦全額をN26の口座に移して、日々の生活費の決済などに使っていました。
N26のアプリ画面は、以下の公式サイトでご覧いただけます!
日下 N26の「Home」という画面ですが、みんなの銀行の「Wallet(普通預金)」に相当するのかなと思います。
日下 今、僕のN26の画面には残高が表示されています。面白いのが、こうやってアプリ画面に手をかざすと……。
日下 残高をぼかして隠せるようになっているんです! あんまり使う機会はないですけど(笑)、面白いギミックですよね。
全員 おおっ!?(笑)
日下 次にN26の「Spaces」という画面。ここは、みんなの銀行の「Banking/Box」に近いのかなと思うのですが。
永吉 みんなの銀行の「Banking」は、「Wallet(普通預金)」と「Saving(貯蓄預金)」に分かれていて。「Saving(貯蓄預金)」では仮想のボックスを最大20個まで作って、目的別にお金を整理・整頓することができます。
永吉 これまでのように、お金を貯めるためにわざわざ貯蓄用口座を開設する必要がなく、「Wallet(普通預金)」を長押ししてBOXにドラッグ&ドロップ、といった感覚的な操作で、お金を簡単に仕分けられるのが特徴です。
日下 僕もエストニアでは、例えば家賃や光熱費などの支払いに使うような「使ってはいけないお金」は、月の給料全額を入れたN26の「Main Account」から、別の「Space」に移動させていました。例えば、家賃の支払い用のお金は「Payment(rent」のSpaceに、光熱費の支払い用のお金は「Utility bill」のSpaceに、といった具合です。
永吉 日下さんのアプリ画面に「Sauna」っていう名前のSpaceが見えますが、一体……。
日下 あ(笑)。エストニアでは個人の自宅にサウナが設置されているほどサウナ文化が根付いているのですが、僕も大好きで、現地にいた頃はよく利用していたんですね。でも、ひと月にサウナに使うお金には上限を設けておかないと、サウナ破産してしまいそうだったので(笑)、「Sauna」というSpaceを作って、お金を管理していました。お金の移動も簡単で、みんなの銀行さんと同じですけど、「Main Account」を長押しして、移動先の「Space」にドラッグ&ドロップして、金額を入力するだけ。でも、毎月その設定を行うのは面倒くさいですよね。そういう時は、「毎月自動的に、100€をSaunaのSpaceに移動する」と設定しておくことも可能なので、そうすれば楽チンです。
永吉 みんなの銀行BOXでも、入金は1円から、日次・週次・月次・年次での自動積立もできるので、N26との共通点は多いですね。
顧客属性に合わせ、保険からTinderまで付帯する「N26」の銀行アプリ
永吉 逆に、相違点で特徴的なものだと、どんなものがありますか?
日下 「Explore」のページでは、「insurance(保険)」や「Perks(特典)」といった付帯サービスが用意されているんですが。N26は、EU圏を移動しながらフリーランスで仕事するデジタルノマドや、学生も含めたZ世代からの人気が高いので、その属性や世代に刺さるサービスとうまく連携している印象があります。
例えば、有料会員であるプレミアムアカウントのユーザーであれば、アリアンツの保険サービスが付帯されていて、スマホの故障・紛失や航空機遅延などにも保険金が支払われるんです。申請も簡単で、N26のインターフェースでできてしまう。僕みたいに、いろいろと個別に契約するのが面倒くさい人間にとっては、とっても便利なので、有料の利用料もペイできているかな?と思うんです。
永吉 日本でも、生活のさまざまな画面で活用できるアプリを統合したスーパーアプリが現れてきていますが、N26では、彼らの世界観と親和性の高いサービスやアプリが連携されているんですね。
上野 確かに。先ほどアプリ画面でもロゴが表示されてましたけど、Z世代のお客さんを多く持つN26らしく、オンラインストレージサービス「Dropbox」やマッチングアプリ「Tinder」と連携しているのは、日本の銀行ではあまり想像できないので、斬新に感じますね!
👇トークイベント後編に続く