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「みんなの銀行」横田頭取に質問!これからの時代、銀行ってほんとに必要なんですか?

なんでもカードやスマートフォンで決済できてしまえる今の時代。デジタルネイティブ世代にとって「銀行」は、どんどん遠い存在になりつつあるようです。そんな中、そもそもの銀行の役割や存在理由について、国内初のデジタル銀行として誕生したばかりの「みんなの銀行」横田浩二頭取にインタビュー。「ここまで聞いていいの?」的なあれこれを、根掘り葉掘り聞いていきます。
文:山村光春 写真:中村紀世志

日本は、世界有数の「持ってる」国。

―― これまで日本では、大人になって就職すると「銀行口座をつくらなきゃいけない」という風潮があったかと思います。

横田:そうですね。おそらく日本ほど、銀行口座を持っている人が多い国はないと思います。アジアやアフリカの中では、口座を持たない人の方が多い国がいっぱいありますし。理由はおそらく、歴史的に見ても日本人は勤勉で、お金に対して真面目。小さい頃から「無駄遣いしちゃだめだよ」とか、「将来に備えてちゃんと蓄えをしておきなさい」と言われている。そんな「お金について、ちゃんと正しくありたい」という気持ちから、口座を持つ人が多かったのでしょう。

―― では、これから先はいかがでしょう?やはり、口座をつくる必要があるのでしょうか。

横田:そう思います。なぜなら「お金について、ちゃんと正しくありたい」と思う気持ちは、おそらくこれからも変わらないから。なおかつ家を買ったり、将来に備えたりというライフプランや、夢の実現のためにお金を蓄える、という事もきっとなくならない。
また「預けたと思っていたお金が、ある日突然なくなってしまう」という事を避けたいのは、若い世代にとっても同じでしょう。国がライセンスを与えた日本の銀行は、預金保険機構が1千万円まで保護するという法律がついているので、安心して蓄える事ができます。

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デジタルの力で“バンク”はなくなる!?

―― なるほど。人が「お金に対して正しくありたい」という気持ちがある限り、そこに寄り添うように、信頼や安心が担保される「銀行」という存在はなくならない、という事でしょうか。 

横田:おそらく、それが私の言いたい事でもあると思います。ただ一方で、銀行って市役所と同じで、用事がなければ行かない場所ですよね。 

―― 確かにそうですね。 

横田:それが今は、市役所だってデジタル化という事で、行かなくても用事が済ませられる。銀行もまったく一緒で、「店舗」という形が今のまま続くかというと、クエスチョンです。むしろ変わっていくと思いますね。物理的な場所に行かなくても、ちゃんと銀行サービスが受けられる。つまり「バンク」がなくなっても、「バンキング」はちゃんとある。今後は、そうなっていくと思います。

―― そうなると、今までは店舗という「場」がある事で、信頼や安心につながっていた銀行が、これからは「場」がなくても、安心を感じてもらえるものでしょうか。

横田:そうですね。だから、ちゃんと日常的な……学生さんであれば勉学やスポーツに励みながら、あまり銀行銀行と、その存在を大きく意識しなくても、ちゃんと伴走してくれたり、使い過ぎた時などは、「どうしたの?」といさめてくれる。そういう存在でありたいなと。

―― その「伴走」という実感が、銀行になかなか持てない。今の若い世代にとっても、とくにその意識は薄い気がします。

横田:今、いろいろな部分で、自分の事を気にしてくれないと思った瞬間に「伴走してくれていない、私は単なるちょっとした客なんだ」と思ってしまいますよね。我々の目指すところは、そう思われないようなコミュニケーションを、デジタルだけでなくヒューマンの力を使って、ずっと続けていく事。

―― デジタルの力を使う事で、むしろ安心を伝えたいという事でしょうか。

横田:そうですね。じゃあ、デジタルってなんなの?ってなるかもしれませんが、テクノロジーのAIを使ったり、様々なデータを結び付けていく事のほかに、お客様の変容だとか、 ニーズのもっと向こうにあるウォンツを先回りする、みたいな事も含めてのデジタル。今まではシステムやオペレーション上の問題だったり、あるいは店舗がメインのコミュニケーションの場であったりしたので、なかなかそこまで密なコミュニケーションは難しかった。ただ不可能な事を可能にするのがデジタルとするならば、我々はその壁を越えていけると思っています。

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「みんなの銀行」はお母さんのよう?

―― デジタルと言えば、今はQRコード決済も普及し、スマホひとつでなんでもできる便利さを感じている中で、私たちは「みんなの銀行」に対する便利さを、どこで感じられるのでしょうか。

横田:銀行で既にやっている様々なサービス、例えばお金を送るとか、借りて頂くとか、普通預金からちょっと利息の高いところに移し換えるとか。そういった銀行業務は、スマホひとつでできるようになる。お買い物したり、電車に乗るのと同じくらいの便利さで提供できるよう「リデザイン(Re-design)」する。まずはこれが、我々が達成したいなと思っている事です。その次は「リデファイン(Re-define)」。お買い物をしたいけれどお金がない、借りたいとなった時に、まずローンを申し込む必要がありますよね。今はワンクッションおかれるところを、もっと効率よくするような事です。ひとつトライしようとしているのが、例えば家電の量販店さんなど、お店の後ろに黒子として銀行が控えていて、様々なバンキングサービスをご提供する。これをテクノロジーを使ってできるなら、新しい銀行の定義になっていくのではないか。もっと生活の中に溶け込むような銀行になれるかもしれない、と思っています。

―― その「生活に溶け込む」というのは、先ほどの「伴走する」とも似ていると思うのですが、私たちはどうすれば銀行を身近に感じる事ができるのでしょう。

横田身近に感じるというよりも、究極、別に銀行の事をあまり気にしていただかなくてもいいのかもしれない。だけど、いざという時に伴走する。空気のような存在だったり、ひょっとするとお母さんみたいな存在だったりするかもしれない。ある時気付いてもらえればいい、くらいになっていくべきかなと思います。

―― 普段は意識しなくても、いざとなった時に「いてくれてよかった」と思える存在。

横田:そうですね。それは多分「お金に対して正しくありたい」という気持ちに気付いた時が、まさにそれじゃないかと思います。

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薄々わかってる銀行の「よくない」ところ。

―― あと忌憚なく申し上げると、私達が銀行を選ぶ時に、何を基準に選んでいいのかわからない。「この銀行いいな、かっこいいな」とは、あまり感じません。そうした面から見て「みんなの銀行」はいかがでしょう。

横田:確かに今の銀行は、お客さま中心のサービスがなかなかできていないと思います。そんな中で我々は、デジタルというテクノロジーを使って実現する。あるいは銀行として自分たちが、「これはよくない」と薄々わかっているところをしないようにする。そうする事で、みなさんが口コミで「かっこいい」と言ってくれる銀行になれると思っています。

―― 「よくないと薄々わかっている」とおっしゃいましたが、それは具体的にどういった事なのでしょう。

横田:ひとつは、厳格な規定主義とでも言いますか。明治以来「こうあるべき」みたいな銀行のパラダイムって、すごい堅いものがあります。またそれを維持するために、ヒエラルキーのような、ちょっと官僚的な組織であったり、人間だったり。あと銀行は、どこに行ってもあまり商品に違いがない。住宅ローン、あるいは投資など大きな差はないですよね。どちらかというと、横並びで似たようなサービスをやっている。それをなんとかお客さま中心に持っていきたいという気持ちは、全国の銀行員ならば、誰でもちょっとは心の中に思っているところだと思います。それを大きく踏み出していくチャレンジだと、我々は感じている。

―― そのために取り組まれている事を、よければ具体的にお聞かせください。

横田:やはり官僚的とか、極めて厳格みたいなものは、ひとえにカルチャーの問題が大きいかと思います。仕事の流儀と言いますか。「みんなの銀行」では今、ゼロベースで銀行を作ろうと宣言して、志を同じくする人達が集まってきてくれています。ITのエンジニアだったり、データサイエンティストだったり、デザイナーだったり。まったく銀行と違う業種の人が入ってくださっている。もともとは銀行にとって異分子だった方々が合わさる事で、フラットなカルチャーができあがって、新しいものを生みだす力を感じます。

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その名をブラックユーモアにしないために。

―― 「みんなの銀行」が「かっこいい」と思わせる要素として、「風通しのよさ」みたいなものもあるというのはわかりました。同様に、サービス面でもそうした取り組みがあれば教えてください。

横田銀行らしくない、UIやUXの部分も積み重ねていますので、ユニークさへのこだわりがあります。「So cool!」って言ってもらえるんじゃないかと(笑)。また我々はフリクションレス(英語で“摩擦”や“”軋轢”を意味するフリクションがない状態)と言っていますが、本当にバンキングはフリクションなんですね。ですから、使い勝手が本当にいいのかどうかを聞きながら、サービスをつくっていく。みんなの声をカタチにする事を掲げています。社名の通りそこをちゃんとやらないと、ブラックユーモアになっちゃう気がします。

―― 「みんなの銀行」という名前は、単に一般的な「みんな」という意味と、銀行内にもいろいろな人達がいる、多様性を表す「みんな」。意味がいろいろある気がします。

横田:そう言って頂けるとうれしいです。最初、「みんなの銀行~デジタルネイティブバンク」は仮称のようなものだったんです。最終的に「みんなの銀行」に落ち着いたんですが、おっしゃる通りの気持ちがあったから、そこに向いていたのかと思います。我々の側も「みんな」だし、我々の向こう側にいる学生で頑張っている方、社会で頑張っている方、そういう人達全部を含めての「みんな」。多層的なんです。

―― まだ生まれたばかりの銀行で、これからどうなっていくのかわからない。けれど同時に、期待もしたい。そんな人たちに対して、どう応えていきたいかを最後にうかがえますでしょうか。

横田:今日スタートして、翌日に一気にポケモンGOみたいに浸透できればいいんですけど(笑)、なかなかそうはいかない。それはバンキングというのが、信頼をベースにしてしか成り立たないものだから。しかもサイバーの中でやっていく以上、事故があってはいけない。それは我々の一番基本になる事です。24時間365日、安心してお使い頂けるというところを、ちゃんと実績でお示しする。その上で、テクノロジーによる使い勝手のよさや、みんなの声が反映されたサービスをつくっていく。「信頼を積み上げていく」という行為は、銀行として、これから先も変わらないと思いますね。


※本文中の写真は、感染症対策を徹底のうえ撮影しています。

※下の写真は、インタビューを行った福岡・西中洲にある「みんなの銀行」のオフィス。リノベーションされたオフィスからは既存の銀行の雰囲気は感じられず、スタートアップ企業のよう。

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