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デジタル給与に関する個人利用意向調査 認知度は6割以上、Z世代「利用したい」65.7%

こんにちは、マネーインサイトラボです。デジタルネイティブ世代のお金事情に関する調査・研究を行っています。今回は第5回目のリサーチ「デジタル給与に関する個人利用意向調査」について、ご紹介したいと思います。

マネーインサイトラボ
ふくおかフィナンシャルグループ傘下のみんなの銀行iBankマーケティングが共同運営するお金に関する調査・研究組織です。デジタル時代における、人々のお金に関する意識・価値観・行動の変化や、新しい金融サービスの可能性について新たな視点を見出すことを目的に活動していきます。

調査テーマは「デジタル給与」です。2023年4月に給与のデジタル払いが解禁されましたが、その認知度や個人の利用意向はどれほどなのでしょうか?

Z世代(18~26歳)、Y世代(27歳~42歳)、X世代(43~58歳)計7,164名を対象に、世代や働き方別に調査をしてみました。

■ Z世代
1990年代中盤から2010年代中盤生まれ。生まれながらにしてデジタルネイティブであり、幼いころからスマートフォンやSNSに慣れ親しんでいる。
Y世代
1980年代序盤から1990年代中盤生まれ。幼少期~青年期にインターネットの本格普及を経験し、ネットを当たり前に使いこなせる。
X世代
1960年代中盤から1970年代終盤生まれ。子どもの頃をアナログ環境で過ごし、成人してからインターネット環境に触れるようになった。

※近年の価値観やライフスタイルに大きく影響を与えているとされるデジタル環境の変遷を基準にした世代で分類

「デジタル給与」とは?

給与のデジタル払い(以下、デジタル給与)とは、給与の一部あるいは全額を電子マネーの残高として受け取ることができる制度です。

その主な特徴は以下の通りです。

  • デジタル給与で受け取った電子マネー残高は現金として出金可能

  • デジタル給与の受け取り先となる電子マネーの残高は上限100万円に定められているため、100万円を超えた分の残高は自動的に事前に登録した銀行口座に移動される。その際に手数料が発生する場合がある

  • 2023年4月1日時点でデジタル給与の対応に向けて金融庁に資金移動業者の指定申請を行っているのはPayPayのみだが、楽天ペイやd払い、au PAYなどが参入する意向を示している

  • 現金化できないポイントや仮想通貨での支払いは認められていない

  • デジタル給与は選択肢の1つであり、労働者のみならず、雇用側に対しても導入を強制するものではない。また、雇用側が労働者に対して、デジタル給与を賃金受取方法として提示する際は、その他の受取方法の選択肢として銀行口座か証券総合口座も労働者に提示しなければならない

政府がデジタル給与を解禁した背景には、キャッシュレス決済の普及促進や送金サービスの多様化による利便性の向上があるようです。

それではさっそく今回の調査結果を見ていきましょう。

認知度は6割以上、 Z世代「利用したい」65.7%

図1

デジタル給与について、「知っている」または「聞いたことはあるが詳しくは知らない」と答えたのは全体の6割超(図1)

しかし世代別に見ると、Z世代の認知度が低く、約半数が「聞いたことがない」と回答しました。

図2

デジタル給与に対する認知度が低いZ世代ですが、概要を説明した上で利用意向を伺ってみると、3.4%が「給与の全額利用したい」、62.3%が「給与の一部であれば利用したい」と回答しました(図2)

「(全額または一部)利用したい」という人が65.7%と他の世代を10%以上上回っており、デジタルに慣れ親しんでいるZ世代は仕組みを理解すれば利用意向を示す人が多いことがわかります。

どの世代も、給与の「全額」をデジタル給与で受け取りたいと回答している人は少数であるものの、「一部だけならデジタル給与で受け取りたい」と考えている人は多く、デジタル給与に一定のニーズがあることがわかります。

副業・アルバイトをしている人のデジタル給与ニーズは高い

図3

また、「副業をしている」と「副業していない」人に分けて見てみると、副業している人の方がデジタル給与に対するニーズが高いことが分かります(図3)

副業での収入が数万円程度の人であれば、本業の収入は銀行口座で、副業の収入はデジタル給与で受け取る、といった使い方が想像できます。

図4

続いて、アルバイトをしている人に絞って利用意向を探ってみると、「(全額または一部)利用したい」と回答した割合は70%近くに上ります(図4)

このように、副業やギグワーカー、アルバイトなど、比較的少額の報酬を受け取る人にとっては、1回数万円程度の報酬をデジタル給与で受け取り、そのままキャッシュレス決済として使用することができるので、利便性が高いのではないでしょうか。

口座を複数に分けられる人のデジタル給与ニーズも高い

図5

さらに、給与振込の口座をいくつ指定できるかによっても、デジタル給与に対するニーズが異なるようです(図5)

給与振込の口座を1つしか指定できない人に比べて、口座を2~4つ以上指定できる人の方がデジタル給与に対するニーズが高く、「給与の一部であれば利用したい」と回答した割合が多いことが分かりました。

また現在1つしか指定できない人でも一部をデジタル給与で受け取りたいと回答した割合が約半数と、給与を分割して受け取りたいニーズがあるようです。

利用したい理由「今後キャッシュレス化が進んでいくから」

図6

では、その利用意向の背景にはどのような理由があるのでしょうか?

「(一部または全額)利用したい」と回答した理由に世代間の違いはほぼなく、最も多かったのは「今後キャッシュレス化が進んでいくから」、次いで「電子マネー残高をチャージする手間が省けるから」でした(図6)

ここ数年で一気にキャッシュレス化が進んだ現状を受け、「キャッシュレスが当たり前になるのであれば電子マネーをチャージする手間を省きたい」と利便性を重視している人が多いようです。

受け取りたい金額は「給与の10~30%」程度

図7

次にデジタル給与として受け取りたい具体的な金額を世代別に見ると、Z世代よりもY・X世代の方が高額傾向にあるようです(図7)

一般的に年齢が高いほど給与も高いためこのような結果になったと推測できます。また、その金額が給与に占める割合を伺うと、どの世代も「10~30%未満」が最も多い結果となりました。

これらの結果から、デジタル給与で受け取りたい金額はおよそ2~5万円、割合でいうと給与の10~30%が目安となりそうです。

受け取り先として利用したいサービスは「PayPay」が最多

給与を電子マネーで受け取るためには、その事業者が厚生労働省の審査を通過し、指定資金移動業者とならなければ利用できません。2023年4月に、PayPayを運営するPayPay株式会社が申請しているものの、認可されている事業者はまだない状況です(2023年9月時点)。

図8

では、利用者はどの事業者のサービスを使いたいと思っているのでしょうか?(図8)

今回の調査結果では、PayPayが圧倒的多数を占め、どの世代でも最も多い結果となりました。特にZ世代は8割以上が選択しています。一方Y・X世代は、PayPay が多いものの、d払いや楽天ペイを選択した方も一定数いるようです。

利用したくない理由「電子マネーへのチャージは都度自分でしたい」

図9

ここまで、利用したい派の意向を見てきましたが、反対に「利用したくない」と答えた方は何が障壁となっているのでしょうか?(図9)

Z世代で多かった理由は「電子マネーのチャージは都度自分でしたいから」「現金や銀行口座への出金時に手数料がかかるから」でした。

Y・X世代を見ると、「障害発生時に残高を保証してもらえるか不安だから」「電子マネーのセキュリティが不安だから」といったサービス自体への不安を感じている人も多いことが分かります。また、どの世代も「申請するのが面倒だから」といった手続きの煩わしさなどが障壁となっている方が一定数いるようです。

金銭的メリットと安全性・利便性の向上が普及のカギ

図10

では、逆にどのような条件であれば利用意向に前向きな変化が生じるのでしょうか?(図10)

この質問に対する回答に世代間の違いはほぼなく、最も多かったのは「ポイント上乗せ」。次いで「現金や銀行口座への出金にかかる手数料の無料化」も半数の方が回答していました。何らかの「おトク感」や手数料で「損しないこと」を重視していると推測できます。

その他、「障害発生時も残高が保証される」といった安全性や、「全国的なキャッシュレス化の普及」「手続きの簡略化」といった利便性の向上を条件とする人も。

金銭的なメリットと安全性・利便性の向上がデジタル給与普及のカギとなりそうです。

おわりに​​

銀行口座を保有することが当たり前になっている日本において、給与の全額を電子マネーで受け取りたいと考えている方はまだまだ少ないようです。

しかしキャッシュレス化が進んでいる今、チャージをする手間を省くために給与の一部を電子マネーで受け取りたいと考えている人の割合は多いようです。特に今回の調査では、「Z世代」「副業をしている人」「アルバイトをしている人」「給与口座を複数指定できる人」のデジタル給与ニーズが高いことが分かりました。

まだまだ本格的にスタートしていないデジタル給与ですが、今後副業をする人が増えたり、仮に指定事業者が導入キャンペーンなどを実施するなどした場合、一気に普及していきそうな気配も感じられます。

調査概要

■調査対象:
Z世代(18~26歳)、Y世代(27歳~42歳)、X世代(43~58歳)
■調査集計期間:
2023年9月6日(水)~9月13日(水)
■調査機関:
iBankマーケティング株式会社
■調査方法:
インターネット調査
■有効回答数:
7,164サンプル(Z世代529名、Y世代2,014名、X世代4,621名)


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